カラフルに祖先と繋がる精霊の衣裳 エグングン

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ヴードゥー教は(Voodoo)は、西アフリカのベナンやカリブ海の島国ハイチやアメリカ南部のニューオーリンズなどで信仰されている民間信仰です。
西アフリカのギニア湾岸、ナイジェリア・ベナン・トーゴ付近が発祥で、今でもヨルバ・フォン・エウェの人々に信仰され、特にベナンでは約40%の人に信仰され、1989年には国の国教に指定されています。

また、ヴードゥー(Voodoo)はカリブの信仰も含めた英語の発音で、西アフリカでは現地ではヴォドォン(Vodun)と呼ばれています。(フォン語での「精霊」の意味)

映画の007「奴らは死ぬのだ Live and Let Die」で登場するような黒魔術を連想させるヴードゥー教は、植民地時代の奴隷貿易で西アフリカからカリブ海地域へ強制連行された人々の信仰とカトリックキリスト教が融合した宗教です。
西アフリカのヴードゥーの儀式の中に鶏や羊などの供物を求め、それを神に捧げたり、床にアルコールなどを注ぐ儀式もありますが、地元の信奉者は魔術や黒魔術とは何の関係もないことを強調しています。

 

 

ヴードゥー教の発祥の地とされるベナンのウィダーでは、毎年1月10日に盛大にVodunヴォドン信仰の祭典が最大に行われ、その中のハイライトは「エグングン Egungun」といわれる精霊のパーフォーマスです。

エグングンは、ヨルバ民族の先祖の霊を代表する仮面舞踊家で、祖先と現世の人々を繋ぐ神であり社会の道徳や争いの判決をもたらすなど、人々の絆と生活の安定を司る精霊とされます。
エグングンのパフォーマンスは様々な、体をモチーフで飾られた華やかな布のマントで覆い、顔もタカラガイの殻の仮面で覆われた状態で踊ったり歩いたりします。その時に、観客が彼らの目を見たり触れたりすると、その人に良くないことが起こるといわれます。
ヨルバ民族の先祖の霊を代表する仮面舞踊エグングンの華のやかな衣装は、布を不死の概念として象徴的に捉えるヨルバの思想を表したものといわれます。
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Oyo-Yoruba Egungun photo source :Bolaji Campbell
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egungun at Ibadan Nigeria 2007    photo source :Bolaji Campbell
ヨルバの社会で布は体を覆い、保護し、美化、敬うだけでなく、宗教的な精神の象徴とされ、葬儀で親せきが集まるときは幾つかの布の束を持ってくる風習があるそうです。布はなくなった人の精神に届く贈り物で、効果でエキゾチックであるほど価値があるとされ、世界中の高価で美しい布が持ち寄られるそうです。
伝統的なヨルバのエグングンの衣裳は、そのような様々な布辺をはぎ合わせたパッチワークの布を、更に繋ぎマントのようにしたもので、ヒダを増やしていくそうです。その作り方は伝統に従うのに対して、デザインや素材は新しいものを取り入れていくそうで、それは過去の伝統や習慣やルールに従いながら現代の革新や変化を組み入れていく、ヨルバの思想を表したものといわれます。
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現代のヴードゥーのエグングンの華やかな衣装は衣裳はアップリケやパッチワークが施された美しい衣装です。
見るだけでも十分興味深いですが、こういった衣裳が生まれる背景やストーリーを少しの覗いてみると、見た目はキラキラしていても伝統文化や思想が凝縮されたアート的作品にも思えてきます。
参照:https://risdmuseum.org/manual/445_cloth_as_metaphor_in_egungun_costumes