CATEGORY

トゥアレグ Tuareg

装身具とトゥアレグの社会

トゥアレグの歴史は古く、千年以上サハラを交易してきた民として知られていますが、いつどこから来たのか、そのルーツははっきりとはわかっていません。 通説で言われている事は、彼らはベルベル人の系列で、言語はタマシェク語(Tamachek)を話、その表音文字のティフィナグ文字(Tifinagh)を看板や標語などで現在でも使っています。 また、古代リビアのルーツを持っているといわれ、トゥアレグは紀元前5世紀にギリシャの歴史家ヘロドトスによって記録されています。(そういえば、カダフィの元でトゥアレグ戦士として戦ってました。)     現在、ほとんどのトゥアレグはある程度のイスラム教を実践していますが、彼らは多くのイスラム以前の伝統を守っています。 その一つに、女性がある程度自由を持っている社会的システムがあります。 コミュニティの決定事項には女性も参加しますし、家系と財産の継承も母系を介して行われます。 女性はテントや動物などの財産を所有し、離婚後の生活も保証されるようで、離婚後は家族でパーティーでお祝いをするようです。(財産を持って帰ってくるからでしょうか?) また、女性の結婚前の生活も、社会とプライバシーのルールを守る限り複数の恋人を連れて歩けたりと、比較的自由があり婚期も遅めだそうです。 ヘアスタイルやファッションへの美意識もとても高く綺麗な女性が多いですし、ジュエリーも女性の方が沢山身に着けます。   伝統的なトゥアレグ社会では、人前では男性は頭と顔をベールで覆い、女性は頭にはベールを被るものの顔は隠しません。 ベールの着け方はイスラムを取りいれる以前の伝統で、砂漠の砂避けとか、悪霊から身を守る為もあるとのこと。 理由はどうであれ、砂漠に映るその誇り高い”青いベールの姿”は非常に美しく、それは多くの人を魅了します。何千年もの時を経て、それが今に残るのは頷くばかりです。     そして、このトゥアレグの社会の有りよう、道具や装身具にも現れている気がします。 こちらのトゥアレグの錠前は、女性の鞄に付けるものです。 始めは女性の鞄用?と思いましたが、女性を取り巻くトゥアレグの伝統社会を知ると、少しその社会を物語っている気がしました。     こちらの鍵は全て手で作ってあり、実際使えます。 やはりトゥアレグの職人集団のイナダン(Inadan) は凄いですね。(因みに、イナダンとトゥアレグのルーツは違うといわれます。) 開け方は下の動画で、鍵の裏にはティフィナグ文字も少し刻まれています。 弧を描くような柄は月を表すといわれ、女性の装身具によくみられます。※但し柄の由来は諸説あります。     現代ではそういったトゥアレグ独自の社会的な伝統も徐々になくなってきているといわれます。特にイスラム過激派のアフリカへの影響は、保守的なイスラムの生活スタイルへの移行につながっているといいます。 何千年と続けてきた美しい文化、有形の物だけでなく、その根底にある伝統的な文化や社会が消えてしまうのは少し寂しい気がします。         参照:ART BEING OF TUAREG , The Tuareg https://www.dailymail.co.uk/news/article-3131511/Sex-Sahara-Striking-photographs-mysterious-Islamic-tribe-women-embrace-sexual-freedoms-dictate-gets-divorce-don-t-wear-veil-men-want-beautiful-faces.html http://www.bradshawfoundation.com/tuareg/index.php

トゥアレグクロスの作り方   Making of the Tuareg cross

トゥアレグクロスは、トゥアレグの人々が住む地域ごと(町ごと)のシンボルマークです。 元々は、父から息子に一人前の大人になった証として渡されるもので、トゥアレグの男子はサハラの交易の旅に出る時に、一人前の男性として認められるそうです。(意味は ”son, I give you the four direction of the world because we do not know where you will die” ) 現代では主に工芸品として作られ、トゥアレグの中では女性が装飾として付ける事の方がが多いようです。 トゥアレグクロスは21種類あり、1970年代頃から職人によって下のようなセットを作り始めたようです。 ※参考文献 「ART BEING TUAREG」     トゥアレグクロスはイナダン(Inadan)といわれる職人集団によって、ロストワックスで型取りしてから柄を彫って作られます。 クロスの彫柄は家紋のような柄を受け継ぎながら、職人アレンジも加えられていたようです。 このイナダン軍団はトゥアレグとはまた違う金属加工・木工・皮革加工などの血族職人集団で、トゥアレグから注文を受け彼らの装身具や身の回りの道具などを作っていました。   トゥアレグクロスの中で一番有名なものが、アガデスクロスで、アガデスの町(地域)のシンボルマークです。 アガデス(Agadez)はいまは各国に分散しているトゥアレグの総本拠地で、ニジェールの世界遺産になっているサハラ砂漠に近い街です。     こちらはアガデスクロスを鋳造している動画と、叩いてる動画です。     シンプルな道具を使い、昔ながらの方法で作られています。   ついでに、下は西アフリカの金属加工職人の本「Legacy」のプロモーション動画です。 西アフリカの金属加工の風景は本当にこんな感じした。 西アフリカには、トゥアレグだけでなく他にも素晴らしい職人が沢山います。